四十肩、五十肩

四十肩・五十肩とは

肩の痛みや動きの制限といった運動障害の総称で、中高年に発症が多いことから四十肩・五十肩と呼ばれています。肩こりに症状が似ることもありますが病態はまったく異なり、肩関節周辺の組織が障害され肩から腕にかけて強い痛みを起こします。


主な症状

肩の痛み、そして関節可動域が狭くなって腕が上がらなくなる、後ろに回らなくなるなどの症状が起こります。徐々に痛くなる場合もあれば、急に強い痛みが生じることもあります。夜中に痛みが強くなって、目が覚めてしまうケースもあります。左右どちらかの肩に起きて、しばらくしてから反対の方にも症状が現れるケースも少なくありません。

症状の進行

症状の進行状態は、大きく3段階に分けられます。適切な治療を受けた場合は、通常半年程度で、症状が重い場合も1年程度で改善して行きます。ただし、治療を受けないと関節可動域が狭いまま固定され、腕の動きの制限が残ってしまうことがあります。

急性期

発症して数週間から2か月程度の期間です。炎症が最も強い時期で、肩と腕全体に強い痛みが生じます。腕を動かすと痛みが強く出て、服の着替えで苦労される方も少なくありません。また、痛みのある方を下にして寝ると夜中に痛みで起きてしまうことがあります。

慢性期

急性期を過ぎて、安静時には痛みを感じない時期です。腕を後ろに回したり、まっすぐ前に向けて肩の高さで地面と平行にしようとすると強く痛みます。急性期に筋肉、腱、関節包が炎症を起こしその後、固くなっているので関節可動域が狭くなり、腕を動かしにくくなります。腕が上がらない症状は慢性期に一番強く感じ、腕の回転などが全くできなくなることもあります。
肩関節が固くなって腕を動かしにくい状態は、肩関節拘縮(こうしゅく)と呼ばれます。

回復期

治療開始に伴い肩関節拘縮が改善して、少しずつ腕を動かせるようになります。徐々に腕が動かせるようになってきます。回復していくまで、数か月から半年程度、重症の場合は1年くらいかかることもあります。

四十肩・五十肩の原因

関節の周囲に炎症が起きて、肩の後ろの方が徐々に固くなっていくことで始まるケースが多く認められます。腱板という部分がダメージを受けて似たような症状を起こすこともあります。
根本的な発症原因は完全にはわかっておりません。特定の動作が起点となり発症することもありますが、腕を上げるような動作を繰り返したり、その姿勢で長時間作業をしたりした場合に発症しやすい傾向があることはわかっています。

四十肩・五十肩の診察

問診で、痛みが起きる部分や、どうした際に痛みが起こるのかをうかがいます。腕の動きと痛みとの関係を知ることは、正確な診断に欠かせません。
さらに触診では、肩の関節周囲を丁寧に確かめています。これによって他の病気との正確な鑑別につながります。肩の痛みで診察を受ける際には、できるだけ肩を出しやすい服装でいらしていただくと診断までスムーズに進みます。

当院の治療

四十肩・五十肩は、急性期に整形外科専門医を受診して、状態に合わせた適切な治療を受けることが重要です。楽に早く治すことができ、後遺症を残さず治すためにも役立ちます。
急性期には、炎症を抑えて痛みを軽減する消炎鎮痛剤を処方します。痛みが激しい場合には、患部に直接抗炎症剤(ステロイド)やヒアルロン酸製剤を局所注射する治療を行うこともあります。また、安静にして肩に負担をかけないよう三角巾などで軽く固定することもあります。痛みの軽減が認められてきた際はセルフストレッチ、筋トレなどで日頃のケアをしつつ再発予防に努めます。肩が固くなってくる前に、なるべく早期に受診していただくことが早い回復につながります。
慢性期になったら、肩関節拘縮の予防や軽減、回復のために、運動療法などのリハビリテーションが有効です。当院では、整形外科専門医と理学療法士が密に連携して安静と運動のバランスをとり、最適なメニューをご提案しています。また、ご自分でできるケアやストレッチ・トレーニング、日常動作の注意点などもわかりやすくお伝えしています。

肩のリハビリについて

肩関節は本来腕をほぼ360度動かすことができるような大変自由度の高い関節ですが、それぞれの役割を担った細かい筋肉と肩甲骨という繊細なバランス構造になっています。この筋肉に炎症が起こる、または姿勢などによって負荷がかかってバランスが崩れると痛みにつながります。よく働く筋肉には疲労がたまって炎症を起こしやすく、休んでばかりの筋肉は縮んで衰えてバランスを崩します。これによって腕を上げられない症状が起こります。
崩れたバランスを補完するために、無意識に身体を傾けるなど無理のある動作を習慣的に行うようになるため、肩にまたアンバランスな負荷がかかって問題が起きる範囲が広がっていきます。それによって、痛みも強くなり、腕を動かせる範囲もどんどん狭くなっていって日常生活にも支障が及ぶようになります。
こうした負のスパイラルを断ち切るためには、適切な肩のリハビリが不可欠です。状態に合わせたメニューを行うことで痛みを和らげて肩のやわらかさを保ち、筋力を上げて快適な生活を送れるようにしましょう。

リハビリの内容

物理療法

痛みで緊張した肩の筋肉をほぐすために、低周波療法などの物理療法を行います。筋肉をリラックスさせて血行が改善する、心地よい療法です。

ストレッチや筋力訓練

理学療法士が、硬くなっている肩周囲の筋肉をほぐして痛みの解消を促します。また、縮んで伸びにくくなった肩周囲の筋肉をストレッチして、肩の可動域を広げます。さらに弱くなっている筋肉をピンポイントに強化するトレーニングを行って筋力アップにつなげ、筋力のバランスを整えます。

自主トレーニング

理学療法士の丁寧な指導のもとで、ゴムチューブ、バランスボールやストレッチボールを使用した筋力トレーニング行います。肩だけでなく、体感の筋肉もアップさせます。

ご自宅でのケアやトレーニング指導

ご自宅でできるセルフケアやトレーニングについて具体的にお伝えしています。また、日常動作へのアドバイスも行っています。

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