変形性膝関節症とは
膝関節が炎症を起こして、痛み・腫れ・変形などを起こし、進行すると歩行できなくなる可能性が高い病気です。
日常生活のあらゆる場面に支障を生じ、生活の質を大きく下げてしまう病気ですが、初期に適切な治療を受けることで進行を遅くして、従来の日常生活を長く続けることができます。
膝の痛みはよくある症状で、初期には痛みがすぐに治まりやすく、受診が遅れてしまうケースがかなり多くなっています。膝の痛みがあったら、できるだけ早くご相談ください。
変形性膝関節症の症状
おおまかに3つの段階に分けることができます。ここでは①初期・②中期・③末期としてご説明します。
① 初期
- 起床後すぐの歩行で膝に違和感を覚える
- 膝に体重がかかると、痛みがある
- 膝の痛みが起きても、少し休めば改善する
② 中期
- 膝の痛みが治まりにくくなってきた
- 膝をまっすぐ伸ばせない
- 膝を深く曲げられない
- 正座できない・しゃがめない
- 膝周辺に腫れやむくみがある
- 膝がデコボコになっている
- 膝を曲げ伸ばしした時に、コリコリ・カリカリという音が伝わってくる
③ 末期
- 膝の変形が目立つ
- 日常的な動作でも膝を動かしにくい、強く痛む
- 歩くのもままならない
- 立ったり座ったりできない
中期ですでに日常生活へ多大な支障を及ぼしてしまいます。末期になると、下半身を動かすほぼ全ての日常的な動作が困難になってきます。生活の質が大きく損なわれてしまい、思うように動けないことで血行や新陳代謝が悪くなり、健康にも悪影響を及ぼします。
初期症状に気付いたらできるだけ早く適切な治療を受け、進行させないことが重要です。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は、一次性と二次性に分けることができます。
一次性の変形性膝関節症は、様々な原因が重なって膝への負担が増えて発症に至るタイプで、変形性膝関節症の大多数を占めます。筋肉が衰えるとそれまで筋肉が支えてきた力が膝にかかり、肥満も膝にかかる体重が増えるので、膝への負担が増えます。膝に負担がかかるスポーツ、靴の影響なども原因のひとつです。こうした様々な原因が積み重なって負担が増え、膝軟骨がすり減って発症します。
二次性変形性膝関節症は、骨折や靭帯の損傷、関節リウマチなど、はっきりとした原因があって発症しているものを指します。
一次性変形性膝関節症の主な原因
- 加齢
- 筋肉の衰え
- 肥満
- 膝に大きな負担のかかるスポーツを長くしていた
- O脚、偏平足
- いつもハイヒールを履いている
- 足に合っていない靴を長期間履いてきた
二次性変形性膝関節症の主な原因
- 膝周辺の骨折にともなう関節軟骨の損傷
- 靭帯損傷
- 半月板損傷
- 膝蓋骨脱臼
- 膝関節捻挫
- 慢性関節リウマチ
など
変形性膝関節症の検査と診断
問診で症状、ライフスタイル、スポーツ歴、これまで経験したケガや病気などについて詳しくうかがいます。さらに、患者様の歩き方を観察します。脚の変形、腫れ、痛みが起こる部位、曲げ伸ばしの可動域の確認、X線検査や関節液検査を行います。歩き方を確認することもあります。その上で総合的に判断して診断しています。
特に鑑別が不可欠な疾患に関節リウマチがあります。関節リウマチと変形性膝関節症は似た症状を起こしますが、治療法が全く異なります。そして、どちらも生活の質を大幅に低下させないためには、早期に適切な治療を受けることが非常に重要な疾患です。当院では、両疾患の専門的な診療経験を長く積み重ねてきた整形外科専門医が慎重に、丁寧に診察していますので、安心してご相談ください
変形性膝関節症の治療
薬物療法、注射、手術などから、患者様の膝の状態、年齢、ライフスタイル、ご希望などをうかがって最適な治療につなげています。痛みの緩和に加え、損なわれた機能性をできるだけ取り戻せるようにしています。
薬物療法
非ステロイド性抗炎症剤の内服薬や外用薬(湿布薬・軟膏)やオピオイド系内服剤を使って炎症と痛みの緩和を目指します。効果の強い内服薬は短期間で効果を得やすい半面、副作用を起こしやすいこともあるため、経過をしっかり確認しながら個々にあった薬物を選択していくように心がけています。
注射
ヒアルロン酸を膝関節内に注射することで、痛みを和らげながら膝関節機能を高め、さらに進行抑制効果も期待できます。炎症が強い場合には、ステロイド剤を膝関節内に注射することもあります。
リハビリ
症状が軽度の場合は、リハビリにより痛みを軽減させるだけでなく、症状の進行を予防することができます。関節の可動域を改善する運動や、膝の関節を支える筋力を強化するトレーニングを行います。
手術
発症原因や進行度などによって手術法が全く異なります。痛みの緩和や機能の向上などが期待できますが、患者様の年齢や体力によってはおすすめできないケースもあります。
薬物療法などで十分な効果が得られない場合には、手術を行うこともあります。
当院では、本院にて手術を行っております。
高位脛骨骨切り術
50代以下で、O脚が原因になって発症しているケースで行われることの多い手術法です。一般に膝の可動域は温存されます。自分の軟骨を温存できる一方で、回復に数ヶ月程度かかるため、適応にはそうした点も考慮する必要があります。
人工膝関節置換術
痛みが激しくて日常に大きな支障がある場合や、膝の変形が重度になってしまった際に行われます。術前より可動域が小さくなることがあります。器材の進歩により以前より耐用性は延長し、一般には60歳以上では適応と考えられます。しかし、活動性や体格によって異なるため個々の適応には慎重な検討が必要です。
人工関節単顆置換術
初期変形性関節症や膝骨壊死などで、O脚があまり進行してない症例で行われます。膝の内側か外側の悪い方のみ置換する手術です。膝の可動域は温存されますが、靭帯機能が残されている必要があるなど適応には制限があります。